2020年末~2021年始における山の気象の記録(公開済み)

気象委員会

 東京都山岳連盟では、毎年この時季には加盟団体及び個人会員からの山行時における山の気象データを収集している。

 しかし、今年度は年末年始頃の大雪予想やコロナ禍の影響などで山行きが少なかった為に、気象データの報告が皆無の状態であった。このため今年度は「山のライブカメラ」を中心とした解説を行ったので、気象遭難事故防止や冬山気象の研究に活用していただきたい。

>>2020年末~2021年始の山の気象データ詳細はこちら(PDF)<<

期間概況

今冬の12月後半になると大陸高気圧の勢力も強まって、本州の日本海側を中心に大雪に見舞われた。このため北日本や北陸地方では大雪のため、交通網を中心に大きな影響があった。

 その後、年末にかけては冬型の気圧配置も弱まり、特に12月30日は日本付近を発達した低気圧を伴った気圧の谷が通過した。このため日本付近の山岳地帯は広い範囲にわたって荒天(暴風雪)をもたらし、12月31日には南アの赤石岳付近で遭難事故が発生した。

各日毎の気象状況(山のライブカメラと実測)

・12月28日 各地に大雪をもたらした冬型の気圧配置も弱まって、大雪も峠を越えた。本州の日本海側に近い八海山も雪雲がとれ、後立山方面も晴れ間の出る天気に回復。しかし、槍ヶ岳や上高地方面は、まだ雪雲がかかっている。一方、太平洋側に当たる八ヶ岳や富士山では、冬場としては普段より雲が多い。 

・12月29日 日本付近の気圧配置は冬型の気圧配置となってきているが、日本海西部には弱い低気圧を伴った気圧の谷があり、季節風の張り出しは弱い。このため八海山や北ア方面、尾瀬付近共に晴れ間のある天気となっている。一方、太平洋側に当たる八ヶ岳や富士山では、やや雲の多い天気となっている。 

・12月30日 日本付近は発達した低気圧を伴った気圧の谷の通過で。山の天気は全国的に悪天となった。発達した低気圧は日本列島の南部を東進して、冬季比較的天気の良い太平洋側に当たる山域も悪天となり、山のライブカメラを見ても、日頃天気の良い八ヶ岳方面や富士山周辺でも雪雲がかかり、この方面の山域も悪天となった。この時季、南アや八ヶ岳方面では冬型の気圧配置が崩れて、2つ玉低気圧や南岸低気圧などの気圧配置になると、日頃天気の良い当山域の山々は悪天に見舞われるので、入山中は常に西日本方面の気象状況を良く把握しておく必要がある。 

・12月31日 日本付近を通過した深い気圧の谷は発達しながら千島方面へと去り、日本付近は典型的な冬型となり、太平洋側に当たる富士山は快晴の天気となったが、八ヶ岳方面は北部に雪雲がかかっている。一方、北アや日本海側に当たる山域は、季節風の吹き出しにより風雪の天気となった山域が多くなった。

・1月1日 日本付近の冬型気圧配置は、大陸高気圧の勢力が弱いため長続きせず、大陸方面には気圧の谷も見え、季節風の吹き出しも弱まってきた。このため八ヶ岳方面の雪雲も少なくなったが、北ア方面の山域は、まだ雪雲に覆われている。 

・1月2日 日本付近の気圧配置は1日とあまり変化はなく、太平洋側に当たる八ヶ岳では上空は晴れ、稜線部は雪雲がかかる程度、北ア方面以北の山域はあまり天気変化はなく、全般に雪雲に覆われている。上層の気温(富士山の気温)も1日~2日共に上昇の傾向を示している。 

・1月3日 日本付近の気圧配置は1月1日以降、同じような型が続いているが、日本の東海上にある寒冷前線の端が東日本の南海上に残っているため、その影響を受けて太平洋側の山域に当たる富士山や八ヶ岳方面では積雲や雪雲が多くなっている他は、全域とも2日と同じような天気傾向が見られる。 

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