2008年度第2号

インターハイ登山大会に想う

副会長 本木總子

 今年も10月12・13日、第16回日本山岳耐久レースが、すがすがしい秋空の下で2000人を超える選手を迎え盛大に開催されました。昨年の事故の反省を踏まえ細心の注意を払っての開催でしたが、大成功の内に無事終了しましたことをご協力、ご支援を戴きました多くの皆様に心より感謝申し上げます。
遡って10月4・5日には第63回おおいた国体が盛況のうちに開催されました。山岳競技は今回からクライミング競技(リードとボルダリング)だけの大会となりました。東京都は成年男子と少年男子の2チームが出場、総合では21位でしたが、少年男子ボルダリングは5位入賞の好成績を収めました。
上の二つの競技は良く知られていますが、全国高校総合体育大会(インターハイ)登山大会については、高体連関係の方々の他には余り知られていないのではないでしょうか。日山協派遣の技術顧問として三年続けて奈良・佐賀・埼玉の大会へ参加させて頂き、インターハイ登山大会を垣間見て感じたことを報告したいと思います。
今年の「彩夏到来08埼玉総体登山大会」は52回目の大会でした。インターハイ登山大会は主催が高体連・日山協・地元の自治体、主管は高体連登山専門部と地元の高体連・山岳連盟が勤めます。長い歴史が積み重ねられたこの大会は、開催県が違っても事前の準備を含めて運営は体系化され、前年の反省も生かして実に見事に行なわれており、高体連登山専門部の組織力には正に脱帽の思いがいたしました。
選手たちの真摯な態度での登山活動は爽やかで感動的ですが、運営にも多くの高校生が「一人一役」をモットーに積極的に携わっています。開会式での司会、スピーチ、テント場で選手の世話、ゴミの処理にいたるまで、どの仕事もしっかりとそれぞれの責務を果している高校生の姿は実に清々しく頼もしく感じられました。
この大会は、男子隊、女子隊ともに4人が1チームそれに監督が1人で四日間の登山活動中「高校生として登山技術、体力、マナーや知識がどれほど身に付いているか」を総合的に審査する競技です。そこで名称も登山競技ではなく登山大会と呼ばれていますが、安全確実な歩行技術やマナーの他に、知識としては天気図の作成、登山計画と行動記録、読図、地形と植生の観察、的確な救急処置などが問われます。登山の装備、食料を含めた幕営技術も審査の対象です。日頃から監督教員の下に研鑽を積み、山行を繰り返している高校山岳部の活動はまさに健全な岳人の育成事業といえるのではないでしょうか。ただ、近年は部員減少に苦慮している山岳部も多く、特に女子部員の確保は難しく今年も8県が女子隊にエントリーできなかったようです。
インターハイ登山大会は、他の競技と違ってその上につながる競技会、インカレや国体がなく、孤立した大会になっているという問題を抱えています。しかしながら、社会人山岳会の新人育成機能の衰退がかなり以前から問題視されている現在、まさに教育活動の一環としての登山、安全登山を主眼に健全な岳人を育てるという重要な任務を果しているのではないでしょうか。選手はもちろん、山岳部で活動している高校生たちが卒業後も山を続けて、近い将来の山岳界を率いる中心的な役割を担って活躍して欲しいと切に願いつつ、高体連の皆様のさらなるご指導ご活躍を期待したいと思います。